公認会計士の資格を持ち、現在は自身の会社でスタートアップ企業の支援を行っている岡田さん。様々なキャリアを積まれた岡田さんがMERC Educationで何を学びどんな変化が起きたのか、またどのような人に受講をお勧めしたいのかを本講座の講師であり、弊社の代表取締役社長でもある福田がインタビューしました。

目次

マーケティングを体系的に理解したかった

ーまずは岡田さんのこれまでされてきたお仕事について教えてください。

公認会計士の試験に合格した後、監査法人に入社し、そこではベンチャーのIPO専門部署に所属していました。

当時IPOに携わった会社が、それまでになかったドラッグストアというジャンルを打ち立ててどんどんと有名になっていく過程を間近で見る中でIPO支援の面白さを感じ、3年ほど証券会社に出向した時期を含め監査法人では25年間IPO支援に関するキャリアを積み上げてきました。

その後2017年に監査法人を退職し、事業会社のCFO、CVCのキャピタリストを経て、2020年に自分の会社を設立しました。主な事業内容は、様々な段階にあるスタートアップ企業の成長戦略を考え、IPOに向けての支援、資金調達の支援、M&AによるEXIT支援をしています。

様々なキャリアを経験されてきたのですね。そんな中で今回MERC Educationの受講に至ったきっかけはなんですか?

業務上様々なスタートアップ企業を支援しているのですが、支援をしている中でスタートアップ企業の多くが抱えている課題も見えてきました。

スタートアップ企業が成長していくためには、様々なステークホルダーに対して成長戦略を語り、共感を得て支援してもらう必要があります。その過程で非常に大切なのは「成長戦略のストーリーがきちんと分かりやすく作りこまれているか」という部分です。

ステークホルダーは多忙であるため、短い時間で相手のビジネスを理解した上で「この会社がこれから伸びていきそうか」を判断します。しかし、この会社がこれからどう成長していこうとしているかのストーリーが分かりにくかったり腑に落ちない部分があると、ポジティブに応援しよう関与しようという意欲が削がれてしまい、支援につなげることが困難になってしまうのです。

ビジネスに関して素晴らしいポテンシャルを持っているにも関わらず、伝え方や成長戦略を語る上での「お作法」が守れていなかったためにせっかくの魅力をうまく説明できていない企業が多いと日々実感しています。

そういった企業に対してこれまでの経験則でアドバイスはできるものの、体系化された状態での理解が足りていないと感じ、より本質的なアドバイスや支援をしていくために今回の受講を決めました。

ーそうだったんですね。ビジネス経験が長い方からいただくアドバイスは、積み上げてきた経験やその中で培った感覚に基づいているので非常に的を得ていて参考になりますね。経験豊富な方は、自然と感覚的に理解していることが多いですが、「マーケティング」として一気通貫で学ぶ機会があった人は意外と少ないのかなと感じています。私はそこに課題感を感じてこういったMERC  Educationを運営していますが、本講座のように体系的に学ぶことの意味はあると思いますか?

あると思います。

マーケティングの言葉の定義は人それぞれバラバラなんですよ。単純にリードをいかに獲得するか?どういう媒体を使ってどう露出するか?というのがマーケティングだと捉えている人が多いんです。

ーいわゆる「プロモーション」「リード獲得」「販促」ですよね。

はい。今回学んで感じたのはマーケティングは「会社の成長戦略を説明するための一つの手段」だということです。

講座の初回でマーケティング戦略の全体像を示してもらいましたが、その話はとても印象的でした。若い方や経験の少ない方はただの目次だとしか見えないかもしれませんが、私にとっては見たことのあるワードがいろいろと出てきて、流れも理解でき「これはまさにスタートアップ企業が資金調達する時のピッチ資料と同じ流れだ」と感じました。これこそがマーケティングなのではないかと思います。

今回の講座を受講したことで明確になったのは、マーケティングというのは会社の方向性やビジネスをどういう方向で作っていくか、何を根拠に確信を持ったのかの思考プロセスそのものだということ。

なのでマーケティング担当者だけが知っておくべきものではなく、経営層にこそまず学んでほしい内容です。

いわゆる「マーケティング作業」についてはノウハウが必要だとは思いますが、「マーケティング戦略」はもっと汎用的なスキル・知識なのだと思います。

ー私自身も様々な会社とやりとりさせていただく中で、代表者や決裁権のある方がマーケティングの感覚を持っていることは重要な要素であると感じています。施策を検討する前にまずはユーザー理解を深めることの重要性がなかなか伝わらないために、上辺だけ、小手先だけの施策の羅列になってしまい、打ち手が限定されてしまうといったことがよくあるんですよね。

全ての施策はマーケティング戦略から生まれていくので、現状をしっかりと分析した上で戦略を立てていないと、どんな小手先の施策を行ったとしても現状を変えていくことができないのではないでしょうか。

経営者にこそ受講していただきたい講座

ー先ほど講座で一番印象に残ったこととして、初回の全体像を示してもらったことだと伺いました。全体像を把握することは全ビジネスマンにとって必要なものだとお考えですか?

そうですね、誰にこの講座が必要かと聞かれれば、マーケティング担当者はもちろんですが、経営層などの意思決定権限者も受講した方が良いと思います。

個別の施策ばかり見ているとどうしても何のためにやっているかが置き去りになってしまいます。そのため視座が高く俯瞰して見れるポジションの人がまず受けるべき講座かなと感じます。

その次に彼らを補佐する人や幹部候補生、経営層と対峙するようなコンサルタントや専門家にもマーケティングの知識が必須ですね。

ーなぜ意思決定権限者にマーケティングの知識が必要だとお考えですか?

理由は2つあります。

1つは、断片的な知識ではなく体系的な知識が身につくことで、施策の見直しや振り返りができ、問題のある箇所を特定して「戻る」ことができるからです。

断片的な知識のままでは、今の議論はマーケティング戦略全体の理論のどこに当たるのかが把握できず個別の施策や考え方に終始してしまいますが、体系的な知識があれば航海の地図のように、マーケティングの中でどの段階の話をしているのかに戻って来れるんです。

もう1つは、ある程度の共通認識は必要ではあるという前提はありつつも、他者に伝達しやすくなるからです。

自分のアイデアを確かなものとするために施策を作ることも大切ですが、その内容を他者に伝達することも同じくらい大切なことです。スタートアップの起業家はこれが苦手なことが多いですね。

私のような立場から見ると、経営者は自社のサービスに自信を持っているが故に、成長戦略においてあまりに無理な前提を置いていることがありますが、それが原因でステークホルダーである銀行などに本当の魅力が伝わっていないことがよく分かります。

しかし、体系的な知識があれば、市場環境などの前提の説明をした上で自社の施策を語るということができるため、相手に納得感を与えて正しく伝達できるところが非常に良いところだと考えています。

ーありがとうございます。少し話を戻したいのですが、実際受講された感想として、講座の内容はいかがでしたでしょうか?

座学パートは具体例が非常にたくさん盛り込まれていて、その情報だけでもためになりましたね。具体例や失敗例はみんな知りたい内容ですし、現場の方ならではの生々しさが良かったです(笑)。

また、ワークショップも実践的でとてもよかったです。ワークショップは性別も年齢も職業もバックグラウンドも異なる人が集まり、限られた時間の中で共通の課題に対してチームとして合意形成をしなければならないため、大変な部分もありましたが、非常に役に立つ内容だと思いました。

その過程の中でこれまで自分の中になかった視点や感覚を教えてもらいましたね。スキルの面でもネットワークの面でも、社外に仕事関係でも友人関係でもない別の軸でネットワークが持てることは財産だと思います。

講座最後の卒業制作の時、ワークショップのチームが私以外全員女性だったんです。課題は「ファミレスがいかにお客さんを増やしていくか」。男性の私は男性のお客さんのちょい飲み需要メインで伸ばしていこうと主張したんですが、まったく共感を得られず見事にダメ出しをされました…(笑)。

その後みんなで話し合った時に、女性の中でも特に「お受験ママ」をターゲットにしたらどうかというアイデアが出ました。習い事に行っている子どもが戻ってくるまでの間の時間調整ができて、なおかつ仲間との情報交換の場にしたい、お受験するくらいだからセレブ感も欲しいかもという話が出る中でどんどんイメージがふくらみ、今のファミレスにはない「ちょっと高級&ちょっとプライベート空間、仲間と長い間いても嫌がられずゆっくりできる」というコンセプトに落ち着いたんです。

私一人だけではそのアイデアは出なかったですし、ディスカッションの中でみんなの意見をきちんと聞いて、共同作業で進めていったことで自分では気づけなかったコンセプトに辿り着けたことに感動しました。

あと、ワークショップ中、議論が煮詰まった時に福田さんがファシリテートしてくださったのも良かったです。

ーチーム内の議論にちょこちょこ介入して、「ここはもう少し広げてみたらどうでしょう」とか言いにいってましたね(笑)

福田さん(MERC Education講師)のような、議論の方向性を整えてくれたり深堀りすべきところを指摘してもらえる存在がいることで、ワークショップが非常に有意義なものになったと感じました。

また、最後のワークショップが一番学びが大きかったですね。2週に渡って行われたのですが、1週目の学びを踏まえて次回講座までの宿題として個人作業が必要でした。

その場で出る意見もすごくいいですが、それをそれぞれが持ち帰りじっくり考えて、自分なりのアイディアをまとめるというプロセスがあった上で議論をすると、持ち寄った時の中身の厚みが全然違うと感じました。後で同じチームのメンバーにも聞いてみたのですが、みんな同じように感じていたようです。

経験値に差があっても共通の知識があれば、その企業は強くなれる

ーボリュームゾーンである30〜40代の受講者の方が「新卒の頃にこの内容を学ぶことができたら良かった」と仰ることが多いです。もちろん新卒で受ける意味もありますが、社会経験のある方が振り返りに役立てることの意味も大きいですよね。

先ほどの「誰にこの講座をお勧めしたいか」という話に繋がるのですが、経験が浅い若い方にはもちろんプラスだと思います。若い方は知識としてマーケティング戦略を習得することに非常に意味があります

でも、私のような50代後半の方が受講した場合、若い方が受講するのとは意味が変わってきて、これまでの経験の振り返りができることに非常に意味があると思うんです。これまでの経験を振り返って検証し、次の仮説を立てるために役立つと感じました。

シニアになって新しい仕事をする人も、もう一度学び直してこれまでを振り返るというリスキリングにも役立つかもしれません。

チームの共通項としてこのマーケティング戦略の知識があれば、これまで経験してきた量や内容に差がある上司と部下でも、同じ知識・キーワードを共有して取り組むことができるので、腹落ち感や伝わりやすさが違うと思うんですよ。

ー上司と部下で正しい意思疎通ができる。そうなるとチームで受けてもらいたい講座ですね。

ほんとにそうですね。

先ほどのワークショップの話に戻りますが、様々な人と話し合いながら講座を受講したことで、年齢も立場も業種も全く異なる人と同期感・仲間感があるのもとてもいいなと思いました。

会社のチーム全員で受けるとなった場合でも、講座の回数が多く話せる機会も多いので、社内の序列を超えた「チーム感」を作り出していくことができるのではないかと思います。

ーマーケティングは1回学んで終わりではなく、何度も使い、学びアップデートしていくものだと考えています。そのため、講座が終わった後も「MERC Guild」(※1)のようなコミュニティ組織を作り、アップデートされた情報を得られる場を作っているのですが、「MERC Guild」に関してはどうお考えでしょうか?

※1:「MERC Guild」とは、卒業後も学習機会が得られる無料で参加できるMERC Education受講生のコミュニティ。月1回実施される応用講座の受講、オフラインでの交流会等、豊富な学びの機会があります。

いろんなバックグラウンドの方が参加することで、自分では気づかなかった視点の意見に気付かされるのが貴重な機会ですよね。

私は「ビジネスはスキルだけでは成功することができず、ネットワークや信頼関係が必要だ」と考えていますので、会社でもなく友人でもないコミュニティが広がるのはすごくいいことだと思います。

そうそう、様々な立場の人が集まるのもいいけれど、同じような境遇の人だけを集めるのも面白いかもしれません。年齢の近い人だけとか社長だけを集めるなど似たように感じる立場でもそれぞれの悩みを共有することで、それぞれがいかに違うかを知れたりする。そこから生まれる事業もあるのではないかと感じます。

ただ、単なる異業種交流会にだけはならないように、あくまでもマーケティングを軸にしたものになればいいですね。

ー同じマーケティングという軸があり、MERC Educationで同じ言語を共有しているからこそできることかもしれませんね。

そうですね。

改めて繰り返しにはなりますが、マーケティングは経営層にこそ一番必要だと感じています。

「今の議論やサービスを何のためにやっているのか」に立ち戻れるような共通理解があればその企業は強いんです。

マーケティングはビジネスを理解するための言語というかツールだと思っています。「この会社がどういうものを作っていてどこに向かっているのか」「結果としてどういう価値があり、どうやって儲けていくのか」といった一連の流れを「なんとなく」の感覚ではなく、マーケティングの手法をはめ込むことでビジネスを正しく早く理解できると感じました。

ビジネスをしている以上、ビジネスを理解する必要がない人はいません。マーケティング戦略の正しい理解がビジネスを進めていく上で一番大切なことだと思います。

ーありがとうございました。