※本記事は2020年4月16日に公開した記事を再掲したものです。

前編「マーケティングは人の心を動かすトータルプロモーションーーMERY中崎彩氏」はこちら。

現在、MERYという女の子をターゲットにしたメディアで、マーケティングに携わっている中崎さん。もともとは、広告代理店でデジタルメディアのプラン作成や業務の推進にあたっていました。

そんな彼女が、いろいろなクライアントと出会い、多くの課題を解決していく中で気づいたマーケティングの本質について語っていただきました。

中崎 彩(なかざき あや)1989年生まれ。 2012年新卒でメディアレップに入社。3年間、既存ルートの代理店営業を担当した後、デジタルプランナーとして総合広告代理店に出向。デジタルに強みを持ちながらも、オフラインを絡めた立体的なプランニングや提案ができるようになりたいと、2016年株式会社ペロリに入社。 現在はBRANDSTUDIOのブランドビジネスプロデュースグループにて、広告主の統合的なマーケティングを提案するプロデューサーとして活躍。

影響を受けた本・人

福田:何か参考になった人や本などはありますか?

中崎彩氏(以下中崎氏):すごいなと思う人は、やっぱり西口一希さんですね。P&Gやロート製薬など、さまざまなブランドで売上を上げ、また次に行って活躍されています。

その西口さんもおっしゃっているのが、数字の裏側にある「人間の心理」をちゃんと見ることです。顧客の行動を注視することが大事で、情報過多な中でいかにコアなファンを獲得するか。狭く深いサービスやブランドが、今後生き残っていくと考えています。

本はMERYに入ってからは、特に読むようになりましたね。MERYの営業チームで課題図書を設定し、セールストークに活かすなどしています。

コピーライター小霜和也さん(Twitter:@kossii)の著書『ここらで広告コピーの話をします。』『急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。』は分かりやすく、初期の頃に読みました。戦略の考え方や重要性、ブランドの概念を学べました。

私はデジタルプランナーとしてキャリアをスタートしたこともあり、手段の部分しか任されないという弱みがありました。自主的にマーケティングの本質を考えていかないと、ただ営業に言われたことに合わせて、メディアを選ぶだけの人になってしまう――そんな恐怖を感じていました。

福田:たしかに今の広告代理店は、デジタル部分は完全に分業化されていますね。

中崎氏:今は直接クライアントのマーケティング担当の方と出会える環境です。毎回新しい知識や知見を得られるし、戦略を考えるうえでロジカルかつ感性もある人たちばかりです。やはりマーケティングは「人の心を動かすこと」なので、ロジカルとセンスの両方を持ち合わせたプロモーションが大切と感じています。

マーケティングは人の心を動かすこと

福田:それでは、今ご自身が関わっている商品やサービスに対する熱い思いを語っていただけますか。

中崎氏:今、私が担当しているアンファーさんでは、MERYで全体のプロモーションを任せていただいています。

アンファーさんといえば「スカルプDシャンプー」が有名で、毛のブランドという認知が確立されています。そのアンファーさんから、女性向け商材であるスカルプDのまつ毛美容液とマスカラのブランド価値向上を改めて取り組みたいというリクエストがありました。

MERYは20代前半がコアターゲットのメディアですが、記事の執筆はターゲットと同じ世代の公認ライターが担っています。そのため消費者と同じ感覚をもったリアルな悩み、インサイトと、ブランド様の魅力の接点を見つけてソリューション提案できることが強みであり、評価をいただいている部分でもあります。

私はクライアントが考えるターゲットにコミュニケーションする際、実際の消費者の思いや意見を取り入れて、どうやったら人の気持ちや心を動かせるか、クライアントと一緒に議論し、長く通用するブランド構築に貢献したいと思っています。

マーケターの気質「なぜ?」が気になる人たち

福田:これからマーケティングを頑張っていこうとしている人たちへ、何かヒントをいただけますか。

中崎氏:そうですね、私はテレビドラマなどを見ていても「なぜ今この時期にこのドラマをやってるんだろう」とか、この時代にどういうメッセージを届けようとしているのかは考えます。ドラマだけじゃなくて、街で見かける広告なども、誰に向けてこのメッセージを発信しているんだろうと考えることは、良いトレーニングになると思っています。結局日々の生活の中で目にする広告に意識を向けることが、一番キャッチアップできるというか、広告への感度が高くなると思います。

福田:確かに多くのマーケターが同じことを言っていますね。

マーケティングに携わる人は、たぶんそういう「人種」なんでしょうね。感度が高くて、みんな「なんで?」を常に考えている――好奇心が旺盛ですよね。

中崎氏:言いにくいのでカットして欲しいのですが、私は最初から広告がすごく好きだったかと問われると、正直なところイエスとは言えませんでした。

福田:それは面白い話ですね、カットしたくないです。逆にそんな中崎さんがどのように広告を好きになっていったのか、プロセスを教えてください。

中崎氏:もちろん嫌いだったわけではありません。どうやったら商品が人に売れるだろうかを考えるのは好きだったかもしれませんが、マーケティングを考えたり、マーケターになりたいと考えたことはありませんでした。

でもMERYに入って、先輩たちにマーケティングの面白さを教えてもらえて本当に良かったと思っています。きっとDACにもMERYにも、私のような人はたくさんいると思います。

福田:私も同じ感覚がありますね。大手の広告代理店さんを見ていると、本当に分業化が進んでいて、マーケティングのことをほとんど考えずに、マーケティングに断片的に関わっている人が多いと感じます。

中崎氏:私もMERYにいて、本当の意味での消費者の気持ちを知ることができました。実際の効果や売上に反映されることを目の当たりにしたことで、マーケティング戦略におけるインサイトの重要性を実感したんです。

福田:DACでテクニカルな施策を学び、MERYでは人に向き合うことで顧客心理に基づく見方ができるようになったということですね。

ユーザーインサイトから「世の中ゴト化」へ

福田:今後もっとこうしていきたいことなど、自社の展望についてお伺いしたいと思います。

中崎氏やはり私は「世の中ゴト化」するようなことに携わってみたいなと思っています。

アンファーさんのプロダクトコピーを考えた経験をもとに、これからは人の心を動かすようなことを、少しでもお手伝いできればと思っています。

キシリトールさんが「大人のための歯磨き」として、新たなマーケットを開拓し、それが「世の中ゴト化」したように、私もクライアント様と一緒に新たなマーケットづくりに携わっていきたいです。

今はマーケティングを考えるうえで従来の「マーケットイン」か「プロダクトアウト」に加え、「ユーザーインサイト」という軸もあると思っています。

定量データでは読み取れないユーザーインサイトを踏まえたコミュニケーションの重要性をクライアントに納得してもらうことが、今後の課題だと考えます。

福田:非常に大事ですね。むしろ顧客心理に基づいた商品が今後世の中にもっと出ていったら、私たちの生活はもっと豊かになるでしょうね。一連のストーリーの中でモノをちゃんと売ることこそが、理想的なマーケティングだと思います。

今日はありがとうございました!

(聞き手:福田正義、執筆:水落康樹、編集:筒井智子、写真:多田優人)