※本記事は2020年7月16日に公開した記事を再掲したものです。

前編「マーケターとして自分を何かに例えるなら「雑草」――Voicy真嶋さんが語るマーケティング人生」では、これまでのキャリアについて本音をさらけ出してお話いただきました。

ビジネスの現場感が、あふれるようなお話の数々。真嶋氏が、どのように「雑草魂」を身に着けたのか。その過程が、とてもダイレクトに伝わるものでした。

後編では、真嶋氏からマーケターを志す若い人たちへのメッセージがあります。最後まで読んで、将来について考えてみると、自然と希望が見えてくるかもしれません。

「雑草魂」のマーケター、Voicyへ

内田:ここからは現在在籍されているVoicyさんのお話を伺っていきます。具体的にどんなお仕事をされているのでしょうか?

真嶋伸明氏(以下、真嶋氏):大きく分けて2つあります。1つは音声広告市場に対するマーケティングの法人窓口責任者。もう1つは企業セールスの担当です。

内田:音声広告市場について教えてください。

真嶋氏:マーケター的な観点で説明しますね。ラジオなどの音声市場は、現在1200億円規模です。非常に小さい市場なので、もっと大きな市場にして、自社の売上を伸ばしていく必要があると思っています。

企業が予算として計上する広告宣伝費にはインターネット広告費の他にテレビ広告に使用する広報宣伝費があります。その予算を、音声広告費として狙っています。これを獲得できれば、今より確実に大きな市場となるはずです。

ちなみに、アメリカや中国では音声市場が急激に伸びてきて、市場として完成しつつあります。海外を中心にAirPodsや、スマートスピーカーのような進化も起きています。それに比べ日本では、旧来のラジオというデバイスがここ30年間進化していません。これは非常にもったいないと思いませんか?

私たちは今、アフターコロナの状況下でも音声市場は非常にホットであることや、音声市場は可能性が広がる面白い市場だと企業側に早く気づいてもらうことをミッションとして取り組んでいます。

内田:なるほど。今のお仕事で、やりがいを感じるのはどんなことですか?

真嶋氏:価値創造型ビジネスに取り組めている。そして、社会の変革を担っている実感がある。この2点に尽きます。新卒の頃から、価値創造型ビジネスを提案したいと試行錯誤してきました。でも今までは、課題解決型ビジネスの事業開発が中心だったんですね。

今はずっとやりたかったスケールのビジネスを手掛けているので、毎日面白くて仕方ありません。

影響を受けた本・人

内田:影響を受けた本についてお話をいただけますか?

真嶋氏:はい。まずは、店舗ビジネスの事例研究をした、この3冊です。

『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝』プレジデント社

『スターバックス成功物語』ハワード・シュルツ著 日経BP

『すべては一杯のコーヒーから』松田公太著 新潮文庫

あとはドラッカーの『マネジメント』。基本中の基本とも言うべき存在で、僕の中ではもう3度目のブームが来ています。必読本ですね。

あとは「日経ビジネス」「ハーバードビジネスレビュー」「トップポイント」などの書評コーナーを見て、手に取った書籍たちです。

『イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン著 翔泳社

『経営のすべてを顧客視点で貫く ≪社長の最強武器≫ 戦略BASICS』 佐藤義則著 日本経営合理化協会出版局

『そのビジネスから『儲け』を生み出す 9つの質問』川上昌直著 日経BP

『プロフィット・ゾーン経営戦略』エイドリアン・J・スライウォツキー著 ダイヤモンド社

『トラクション』ガブリエル・ワインバーグ著 オライリージャパン

内田:ありがとうございます。いつ頃、読まれたんですか?

真嶋氏:ベンチャーバンク時代に読んだものが多いですね。同期が優秀だったため、焦りを感じていたんです。ハーバードビジネスレビューも購読していたんですが、読むだけで2週間もかかるので、鞄に入れて隙間時間にひたすら読んでました。

今は情報収集が楽な時代なので、SmartNewsやグノシー、NewsPicksなどで代用できるかもしれません。でも日経新聞と日経ビジネスは最新ビジネストレンドの背景を理解するために、ハーバードビジネスレビューは最新ビジネス用語を確認するのに必要だと思っています。

内田:ありがとうございます。これまで影響を受けた人についても教えてください。

真嶋氏:ベンチャーに入るきっかけとなったのは堀江貴文さん。好きなのはサントリーの新浪剛史さん、日本電産の永守重信さんです。

身近な人だと、新卒時代の営業部長ですね。彼に言われたことがきっかけで、物事を俯瞰的に見れるようになったと思います。会社に対して否定的な発言ばかりしていた時期もあったんですよ。

「このプロダクトは、この市場に合いません」とか、あるべき論を振りかざしていたんですけど、その営業部長から「お前は、何と戦っているんだ」と言われて。社内の誰かと戦うのではなく、そのプロダクトをお客さんに届けるために競合と戦うべきなんだと気づかされたんです。僕の中では、ある意味「事件」でした。

内田:視野とその向けるべき方向性が違ったんですね。

真嶋氏:はい。その「事件」をきっかけに、僕自身エリアマネージャーになっていくので。視野を広げてもらったことで、マーケターとしての視点を手に入れられたのかもしれません。

「雑草魂」のマーケターから、みなさんへ

内田:最後になりますが、もしマーケターになりたい若い人に向けてアドバイスをするとしたら、どんなアドバイスをされますか?

真嶋氏:そうですね。大企業に入るべきだと伝えると思います。なぜなら余裕ができるから。大企業に入れば時間的な余裕もできるし、資金的な余裕もできる。やりたいことは副業でやればいいんですよ、今は特に。

内田:なるほど。

真嶋氏:最初から自分で立ち上げてしまうと、いらない苦労を背負うことになるので。できれば、大企業のビジネスモデルを学び、自分のバリューを出しながら、一方で小さいビジネスで構わないので起業すると良いと思います。僕が新卒だった頃、まだスマホやiPhoneが登場する前でした。スマホ一台であらゆる申請が完結できたり、起業に必要な情報収集が完了たりする、こんなに素晴らしい環境もあるので、活用しない手はないです。

あとは、MERC Educationのマーケティングスクールで「勝てる」方法を学ぶことができたらいいのでは。ここでいう「勝てる」というのは、自分なりに勝てばいいという意味です。重要なのは、「何かの課題を解決する」事業なのか、「新しい価値を創造する」事業なのか。自分はどちらを成し遂げたいのかを見つければいいのでは。

内田:大企業で学びつつ、副業で小さく起業してみる、その両輪が回せると良いわけですね。

真嶋氏:はい。あとは周りから任された仕事の中にチャンスが潜んでいる可能性があると思ってみてください。逆に自分から手を挙げた案件は、うまくいかないことが多いかもしれません。今日のアドバイスを駆使すれば、僕以上のマーケターには短期間でなれると思います。

内田:若い人への心強いアドバイス、ありがとうございました。